南部のお話

夜あるくお地蔵さま

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 むかしむかし、柳戸(やなと)のお寺で本堂の建てかえの話しがでました。

 檀家の衆(だんかのしゅう)が集まっては

「あちこちがえらい傷んでるから、このままでは観音様に申し訳ねぇ」

「そうはいっても、大普請(だいぶしん)ともなると、どれだけ銭があっても足らねえぞ」

 何度話し合っても、よい策が浮かびませんでした。

 そんなある日、ひとりの村人の夢に柄杓(ひしゃく)を持ったお地蔵さまが現れて

「観音様の本堂をなんとしても建て替えたい。必要な木材などを奉納してはくれまいか」

 お地蔵さま直々に夢に立たれた村人は、畑仕事も後回しにして出来る限りの木材を集めては境内に運びました。すると他の村人たちも同じように木材や金具を運び込んでいるではありませんか。

「夢の中でお地蔵さまに頼まれたんだ」

「いしゃ(お前)もか」

 なんと、多くの村人の夢にお地蔵さまが現れて材料を奉納するようにお願いして回られたのです。

 そのためいつしか境内は、普請(ふしん)に必要な材料が山積みとなり無事に建て替えができたそうです。

 村人の夢枕に立たれたお地蔵さま(伝教大師最澄の作と伝わる延命地蔵菩薩)とひしゃく(陀羅柄杓)は、今も柳渡の観音様(弘誓院福万寺)に大切に祀られています。

 また、このお地蔵さまは子どもが大好きで、夜な夜な手賀・片山地区まで歩かれて子どものいる家を訪ね、泣く子をあやし、弱い子には活力を与えたという言い伝えが残っています。

このお話しの舞台


参考資料