南部のお話

厄病おん出し

 むかしむかし、増尾(ますお)村でたくさんの病人が出たことがありました。

「うちのおっかぁは腰が痛くて畑仕事が出来なくなっちまった」

「うちの爺さまは寝込んだまま、起き上がることも出来ねぇだよ」

 その頃のお百姓さんは家族総出で畑仕事をする慣わしになっていました。そのため、家に病人が出ると働き手が減ってしまって、それはそれは大変なことだったのです。

 村の長老が言いました。

「これはきっと厄病神(やくびょうがみ)の仕業だべ。村から厄病神を追い出すために鎮守(ちんじゅ)さまの神輿を出して村中を練り歩こう」

 若い衆が集まり、鎮守(ちんじゅ)様の神輿を担ぎだし、病人のいる家々を順番に回っていき、最後に大きな杉の木がある村はずれの三又のところまで練り歩きました。

 するとどうでしょう、不思議なことに病人たちは日に日に具合がよくなり、とうとう村から病人がいなくなったのです。

それからというもの、大きな杉の木のある三又のところを「厄病(やくびょう)おん出し」と呼ぶようになりました。

このお話しの舞台


参考資料