北部のお話

こんぶくろ池

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 松葉町(まつばちょう)の掘割(ほりわり)をどこまでもさかのぼっていくと、正連寺(しょうれんじ)まで続き、雑木林にかこまれた古い小さな池に出合う。これがこんぶくろ池であり、大堀川(おおほりがわ)の水源です。こんこんとわき出る清水は、昔から絶えることなく、堀を伝わって手賀沼(てがぬま)まで流れながら、まわりの田園をうるおし、人力では及ばない大きな役割をもくもくと果たしているのです。

 このこんぶくろ池には、昔からいろいろの言い伝えが残っています。池の名前も、こんぶくろに似ているところから、そう言われるようになったのだと言われています。

 ずっとずっと昔の話になりますが、そのころ田や畑で仕事をしていたお百姓さんたちは、のどがかわくと、この池のきれいな清水を飲みにきていました。牧の馬たちも、木にさえずる小鳥たちも、野をかけまわる鹿や兎たちもこの池に集まって、それはそれは平和な風景を見せていました。

 あるとき、畑に出ていた若者がいつものように水を飲みにきました。池はまわりの木の影を落として、みどりいろに澄みきっていました。はじめ、手ですくって飲んでいた若者は、手をついて腹ばいになり、池に顔をつけてむちゅうでのみました。そのとき、池の水がにしきいろに輝いているのに気づきました。びっくりして顔をあげると、目の前に美しいこんぶくろ(きんちゃく)が浮かんでいました。若者は思わず手をのばしましたが、波にゆらゆら揺れているこんぶくろは、なかなかとれません。木の枝につかまって足をのばしたり、いろいろやっているうちに、こんぶくろは見えなくなってしまいました。若者は、村に帰ってその話をしました。村の人たちは、

「それはきっと米を生むふくろだんべ・・・・・・。」

「いや、それは子を生むふくろだんべ・・・・・・。」

と、つぎからつぎへと伝わってうわさ話に花が咲きました。それからは誰言うとなく、こんぶくろ池と呼ぶようになったということです。

このお話しの舞台


参考資料