昔、大井に追華城(おっけじょう)という小さな城がありました。
大津川をはさんだ対岸の戸張城(とばりじょう)と仲が悪く、何度も小競り合いが起きていました。
いよいよ、その戸張城と戦さになりました。
時の追華城主は坂巻若狭守(さかまきわかさのかみ)、対する戸張方の大将は戸張彈正(とばりだんじょう)。
優勢に立った戸張勢が大津川を渡り追華城をめがけてすすんできます。大井勢も奮闘しますが、戸張勢の大将、弾正が追華城の城山を上ってきたところで坂巻若狹守と一騎打ちになりました。命を懸けた戦いは決着がつかず、両将とも組み合いながら下の田んぼに落ちて行きました。相手に短刀を抜かせてはならないと、互いに上になり下になり、田んぼの泥の中で苦しさのあまり、どちらかが相手の鼻に喰いついたのです。
この戦さの結果はわかっていませんが、それからは、この田んぼを「鼻喰田(はなつけげ)」と呼ぶようになったそうです。