北部のお話

紅い龍と布施弁天

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 むかしむかし、まだ布施(ふせ)弁天のあたり一帯は大きな沼地でした。

 ある日、大雨が降る中、雷とともに赤い龍が現れ、手に持った土の塊(かたまり)で島を作りました。

 それからしばらくして村人の間で、夜になるとその山の東側が怪しく光ると噂になりました。

 ある夜、村人の夢に天女(てんにょ)が現れ、

「私は、但馬の国朝来郡筒江の郷(たじまのくに あさごごおり つつえのさと)=現 兵庫県朝来郡和田山町)から来ました。私を探してお祀りしなさい」と告げました。

 夢から覚めた村人が島に行き、おそるおそる光をたどっていくと岩谷(いわや)の中に三寸(さんずん)ほどの木彫りの弁天像があったのです。村人はそれを大事に抱え、茅葺(かやぶき)の小さな祠(ほこら)を建てて、弁天像を祀りました。しばらくたって、弘法大師(こうぼうだいし)がその話を聞き、お寄りになった際にその弁天像を見たところ、

「これは間違いなく私が、但馬(たじま)の国で願いをかけて彫った弁財天である」と大変驚かれました。

 そして弘法大師(こうぼうだいし)はここにお寺を建て、紅龍山(こうりゅうざん)と名付け、村の名前には天女(てんにょ)のご利益(りやく)にあやかり「布施(ふせ)」という名をつけられました。

 弘法大師(こうぼうだいし)からこの話をお聞きになった嵯峨(さが)天皇はとても感動し、お寺に田畑を与え、いくつかの建物を建てて、この寺を天皇家の祈りをささげる勅願所(ちょくがんしょ)に定められたということです。

このお話しの舞台


参考資料