北部のお話

こんぶくろ池

 遠い昔のことです。日もやがて暮れるころ、正連寺(しょうれんじ)の里へ身なりのまずしい、ひとりの旅の僧があらわれました。

 そのお坊さんは、

「わたしは、こんぶくろ池の主の使いでまいりました。こんど、手賀沼(てがぬま)の主がこんぶくろ池の主に会いにくることになりました。池をにごしては困りますので、これからはこんぶくろ池のうなぎは取らないでください。もし、約束してくださるなら、田や畑の作物は今までよりもたくさんとれるようにしてあげます。約束してくださらないと、米は一粒もとれなくなってしまうでしょう。」

 そう告げるとお坊さんは立ち去りました。村の人たちはおどろいてしまいました。そして、その不思議なお坊さんのあとを、こっそりつけていきました。お坊さんは、こんぶくろ池のそばまでくると、夕闇にまぎれて見えなくなってしまいました。みんな目をこらして池の方を見ていると、ボチャンと大きな音が池の中からきこえてきました。みんな目をみはりました。池の中ほどに、大きなうなぎの顔が深く沈んでいくのが見えました。みんなは、不思議だ不思議だといいながら、気味わるく思いました。そして、村じゅう寄り合って、これからうなぎは取らないよう、かたく約束をかわしました。その年の秋は大豊作でした。それから毎年作物はたくさんとれるようになって、人々のくらしは、たいへん豊かになっていきました。これはこんぶくろ池の主のおかげにちがいないといって、正直な村人たちは、約束を守りつづけました。

 今でも、正連寺の人たちは、祖先のきめたことを守って、うなぎはたべないとのことです。

このお話しの舞台


参考資料