南部のお話

雪を降らせたキツネ

むかし、根古屋(ねごや)のげん婆さんがキツネに化かされた話しだよ。
その日、げん婆さんは孫娘のはるをぶって(おぶって)二町(約220m)ぐれえ先にある仲人親せきの七右衛門(しちえむ)の屋敷に遊びに行っただ。
その帰り、きつね山の下にある田んぼの土手を歩いてっと、急に雲が出てきてコソ雨が降ってきたんだと。
げん婆さんは、はるを濡らさねえように蛇の目をさしたそうだ。
なんか後ろが気になってよ、いま来た道を振り返ったとたん、びっくり仰天だ。

なんと、あたり一面に雪が積もって銀世界だっただ。
たまげたげん婆さんは「おっかねえ、おっかねえ」とつぶやきながら雪道を歩いて 屋敷に帰ろうとすっけど、いつになっても屋敷さ着かねえ。
歩いてたのは屋敷のすぐそばだったのによ、いつになっても着かねえだと。
背中のはるも怖かったんだべ、婆さまの腕をギュッと掴んでたそうだ。

どんだけ歩いたんだか、わからねえけど、あっちこっち歩きまわって、やっと屋敷に戻れたのは日が暮れた頃だった。気がつけば雪なんかどこにもなかったと。家で待ってた爺さまは「キツネにやられたな」と笑ってたって。


キツネは道に迷わせるのが得意だからな。迷うはずのねえ道に迷った時は、きっとキツネのしわざにちげえねえぞ。

このお話しの舞台