南部のお話

地獄から戻ったお姫様

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 むかし平将門さまに、とても美しいお姫さまがおりました。

 両親はもちろん、供の者にも可愛がられ、素直にすくすくと育ちました。

 また心がきれいで優しいお姫さまは、

「私は優しそうなお顔をされたお地蔵さまが大好き!」とお地蔵さまをとても大事に信仰しておりました。

 ある日、そのお姫さまが病気にかかってしまいました。

 両親も、供の者も一生懸命に看病し、有名なお医者さまにも

 診てもらいましたが原因もわからず、具合はどんどん悪くなるばかり。

 とうとう亡くなってしまいました。

 そしてお姫さまは、なんと地獄に落ちてしまったのです。

 地獄では針の山や血の池で、言葉では表せないような責め苦にあいました。

 すると苦しんでいるお姫さまの前にお地蔵さまが現れたのです。

 お姫さまがきれいで優しい心の持ち主ということを知っているお地蔵さまは

「ここはそなたが来るような場所ではない」と言い、お姫さまを現世に戻されました。

 こうして生き返えることができたお姫さまは、ますますお地蔵さまを大切にして、名前を如蔵尼と改めました。如蔵尼とは、お地蔵さまのように慈悲深い人という意味です。

 その後、如蔵尼の父、平将門さまが戦で負け亡くなった後も、岩井というところに地蔵堂を建て、父や一族の霊を弔い静かに暮らしたということです。

(岩井 龍光院)

このお話しの舞台


参考資料